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公益社団法人 日本社会福祉士会 生涯研修センター

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社会福祉士として共通基盤を有すること

1.社会福祉士の専門性

社会福祉士とは, 「専門的知識及び技術をもって, 身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ, 助言, 指導, 福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者」 (社会福祉士及び介護福祉士法第2条) である。 何らかの理由により日常生活を営むのに支障がある人たちを社会福祉の側面から相談援助を行い, 必要な支援のコーディネートをしていくことが使命なのである。

しかしながら, われわれは自分が所属する施設や機関の種別にとらわれて, すぐに児童, 高齢, 身体障害, 知的障害, 精神障害……と区分してしまう傾向がありはしないだろうか。 分野ごとに細分化された施設や機関に一度就職してしまうと, その分野のことだけしかわからなくなってしまうことが多い。 また従来の援助のなかでは, 十分なアセスメントをせずにサービスを当てはめるだけであったり, 施設のなかで安全に生活できさえすればよいという意識があったりと, 相手に対して一方的な指導や生活管理が行われてきたこともあった。

社会福祉士としてまず大切な視点は, 利用者を属性 (法制度の適用による年齢や医療的区分) からとらえるのではなく, ICF の視点をきちんと踏まえ, 一人ひとりの生活実態を踏まえること。 同時に, 一人の人間としての生存権に根ざして福祉ニーズに迫っていくことである。 相談援助と支援のコーディネートを担う社会福祉士は, 専門職としての共通基盤を獲得し, さらに研鑽によって専門性を向上させていかなければならない。 その際には, 社会福祉士としてのジェネリックな力量を形成しておくことが不可欠になる。

 

2.今日, 社会福祉士がおかれている状況

社会福祉基礎構造改革以降の社会福祉の現場はどう変わってきたのであろうか。 今日の社会福祉実践を考えていく際に新たなキーワードが生じている。 社会福祉士はいたずらに時代に翻弄されてはならないが, 一方でその変化に敏感でなければならない。

第一点はこの改革で基本理念としてとらえられてきたのが, 「地域自立生活支援」 である。 ニーズに応じて総合的な支援ができる専門性, コミュニティソーシャルワーク (Community based Social Work) が求められている。 個別支援を中心に, 生活場面としての地域へのアプローチも同時に行っていくことになる。 日常生活圏域などを意識した個別支援と地域支援の統合化が実践を通して求められている。

第二点は 「地方分権 (地域主権)」 「規制緩和 (サービス供給主体の多元化)」 の傾向である。 このなかで改めて実践現場における地域内のアドミニストレーションの必要が生じてこよう。 従来の措置制度のなかでのアドミニストレーションとは異なる, 主体的責任的な経営論理が求められる。 社会福祉の企画, 計画化, 評価, 経営は単に組織管理職だけの能力ではない。 個々の専門職がセルフマネジメントも含めて, 自律的に関与していくことが大切になる。

第三点は 「利用者主体の構造転換」 (措置から契約) に対して, 具体的にどのような支援が可能かということである。 このためにはエンパワメントアプローチが不可欠とされているが, 実際には専門職側の大きな意識改革が伴わなければ, 形骸化するのは必至である。 時としてこれまでの 「専門性」 を否定することを含めて, 利用者との関係を再構築していく厳しい営みである。 具体的には, 主体形成, 権利擁護, 情報公開, アカウンタビリティ, インフォームドコンセント, 苦情解決のシステムを構築していく力量が必要とされる。

そして, 第四点として 「福祉文化の創造」 をしていく能力である。 ノーマライゼーションやソーシャルインクルージョンを関係者の間だけで唱えているのでは具現化しない。 社会的排除やコンフリクトが起こり得る現場において, コミュニティアクションを起こしていく力が専門職には求められる。 そこではボランティア, NPO, 福祉教育, 福祉情報, 住民参画を促していく力が求められる。 これからは, 施設のなかだけでソーシャルワークが完結することはあり得ない。 一人ひとりのソーシャルワーカーに福祉計画を策定していく能力が求められてこよう。

以上のような背景から, 本会の生涯研修制度が設計されてきた。 かつ, この共通研修課程における共通基盤が重視されてきたのである。 ベーシック, ジェネリック, スペシフィックの構造は決して積み上げではない。 そのバランスをとりながら社会福祉士個人のなかで総合的に身につけていく研修課題である。 その際の社会福祉士としての共通基盤が 「共通研修課程」 である。
共通研修課程の構成として, 今日の時代状況に即した内容を六つの領域として構造化を試みた。 ただしそれらは 「6領域」 に固執した考え方ではない。 現時点での社会福祉士に求められる力量 (研修内容) を六つに構造化したものであり, これは将来変化することも十分にあり得ることである。 むしろ大切なのは, 社会福祉士として共通基盤を共有するという基本原理である。 いかなる職域, 職種であっても, 社会福祉士として共通に共有すべき力量を形成する基盤として, この生涯研修の共通研修課程は存在するのである。 つまり6領域とは, 「社会福祉士の実践力を担保するための価値・知識・技術の共通基盤」 ということになる。

 

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