スクールソーシャルワーク実践ガイドラインについて
スクールソーシャルワークは、1980年代後半から各地域で取り組みが行われてきました。2008年に文部科学省が「スクールソーシャルワーカー活用事業」として事業化したことによって、福祉・教育関係者にスクールソーシャルワーカーという言葉が全国的に認知されてきました。
日本社会福祉士会では、子ども家庭支援委員会にスクールソーシャルワークプロジェクトチームを設置し、スクールソーシャルワーカーとして活動している会員に声かけを行い、研修、情報交換などを行う一方、非常勤雇用の状況が多いことについて常勤化要望を文科省に行うことなどを行ってきました。また2009年10月に「新任ソーシャルワーカーのための自己チェックシート」を提供しました。さらに2018年以降、各都道府県社会福祉士会の担当者を中心にした全国研究集会も実施しています。
文科省事業開始後10年を経ましたが、近年は各自治体におけるスクールソーシャルワーカーの活動のあり方、および雇用状況に相当の差異が生じていることについては共通に認識されており、自治体への働きかけも各都道府県社会福祉士会の重要な活動とされております。
現在、子ども、学校がおかれた環境は複雑かつ厳しい状況に置かれています。児童虐待の急激な増加による社会全体の子ども家庭に対する関心の増加に加え2015年4月に施行された「いじめ防止対策推進法」などにより、さらにスクールソーシャルワーカーの役割が着目されています。これには専門職への期待と厳しい評価が含まれています。このような経過のもとスクールソーシャルワーカーの名称は知られてはきたものの、その活動についての社会的理解については未だ不十分な状況です。
そこで、これらを受けて日本社会福祉士会として「社会福祉士の倫理綱領、行動規範」と「子どもの権利条約」および「平成28年改正児童福祉法」を共通基盤とした価値をスクールソーシャルワーカーが身につけ、教育と福祉を包摂した視点から活動できることを目的に「ガイドライン」を作成しました。
本ガイドラインは、権利擁護の実践モデル、個別支援アセスメントと帳票の活用、支援会議の運営と進行、社会資源ネットワークと地域アセスメントの進め方、「実践アドバイザー」の設置と役割という5つのセクションから構成されています。
特に「実践アドバイザー」については、今日、スーパーバイザーについての定義や運用について全国的に幅があることから、本文での説明にご理解いだきたいと存じます。
この「ガイドライン」をスクールソーシャルワーカーの日々の職務遂行を高める行動指針として活用することで、スクールソーシャルワーカーが関わる子どもや家庭、学校・教職員および子ども家庭支援関係者からの信頼が増すこと、そして全国の社会福祉士会での生涯研修や子ども家庭支援委員会などでの活動指針になることを期待しています。